NCの日記

孤立気味に生きてきたおっさんの日記です

『スーパーサイズ・ミー』

スーパーサイズ・ミー [DVD]

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監督・出演、モーガンスパーロックさんです。
「マックを一日三食、一か月食べ続けたらどうなるか?」というのはおバカなノリで気楽に見られるように思えますが、映画の中では専門家や関係者へのインタビューも思っていたより多かったです。もちろん、マックを食べている最中の様子もたくさん入っており、気軽に見られるような音楽で編集されてますが、内容自体は意外とシリアスなドキュメンタリーです。

マックを食べ続けることで次第にグッタリしていくスパーロックさんの様子がわかりますので、視覚的に訴えかけるものがあります。食の安全に興味がある方はおもしろいと思います。

ただ、実験開始初期にスーパーサイズを食して気分が悪くなり戻してしまうシーンや胃のパイパス手術の様子などもモザイクなしで入ってますから、リアルな反面グロ注意な面もありました。


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自分はこの映画のメイキング・後日談・追加要素を加えて書き下ろされた『食べるな危険!!』の方から入ったので、ある程度の内容を頭に入れての視聴になりました。だからこそ、インタビューシーンで専門家の方達が発しているメッセージの意味などが割とスッと頭に入りましたが、まったく予備知識ゼロの初見だと「マックチャレンジ以外の部分」についてピンとくるかどうかって感じです。

「マックを食べ続ける」という一種のトリビア的なチャレンジに目がいきがちですが、スパーロックさんが発しているメッセージというのを要約すると「これほどヤバイ食べ物を提供している大企業が、社会を大きく動かすほど定着している実態についてのレポートと警鐘」ではないかと自分は感じました。

本題は社会で知らぬものがないほどの大企業が、どうやって「有害なもの」を売りさばきながらも社会における不動の地位を得ているのか、そのカラクリについて一定のヒントを提供することのように思います。

マックチャレンジの方は、もちろんそれを食べ続けると人体にどういう影響があるのかの調査もありますが、むしろこっちはもうオマケのようにすら自分は感じました。マックが体にいいと思っている人はあまりいらっしゃらないでしょうしね。





など、自分は元から食の安全に興味があるタチなので本も映画も非常におもしろく見ましたが、単純にマックを食べ続けたら人はどうなるかって意味で見るのもいいと思います。本編は約100分ですが、インタビューシーンなどを飛ばすと一時間もないかもしれないです。

見るのもだるい人のために簡単に書いておくと、マック月間の最終あたりではドクターストップを勧められ、場合によっては命の危険があるほど体内(特に肝臓)がヤバイ状態になるそうです。

「マックばっかり食べてたら死ぬ」は比喩でも例えでもないみたいですね。

『食べるな危険!!』と併せて見ればもっと内容がよくわかってオススメですが、本を読むのはだるい人は寝転がっても見れる映像のほうが楽でいいかもです。また、本を読んだ人でも映像で見ることのインパクトというものがありますので、オススメですよw



ちなみに、『食べるな危険!!』には、この映画を発表した後の反応についても書かれています。

おもしろいというか、逞しいというか、恐いなとも思ったのは、この映画自体が「ファストフードの宣伝」に使われかけたという一幕があったようです。本文中に記載がありますが、スパーロックさんの知らないところで映画の配給会社とサブウェイ(マックのライバルチェーン)の間でタイアップがされかかったり、サブウェイから「(自社のイメージアップのため)キャンペーンで映画のDVDを配りたい」という申し出があったりしたそうです。

スーパーサイズ・ミー』は確かにマックが舞台に選ばれてますが、マックへの個人攻撃が目的ではなくて、ファストフード業界全体に関わる問題定義が主題です。それにも関わらず、マックが舞台であることを逆手にとって、他のファストフードが自社の宣伝材料に活用しようとしてきたというエピソードは、彼らのやり口や考え方の一端がよく表れている部分かと思います。


この映画が反響を呼ぶと、大企業群は反「スーパーサイズ・ミー」活動をしてきたりもしたそうです。企業が雇っている圧力団体から何かと批判を受けたり、スパーロックさんがインタビューを受けるとマック側にも発言させろとインタビュアー側が圧力をかけられたりと、いろいろあったみたいですね。

そして、映画がらみの活動で世界各地を訪れたりもされたようですが、どうやら日本にもいらっしゃったようで、本文中で日本について言及された部分もあります。内容を読んでなんだかなぁと思いました。

日本では不思議なことが起こった――どのテレビ局もラジオ局も、僕にインタビューしようとしないのだ。全くなしだ。
(中略)
僕が訪れたほとんど全ての国で、マクドナルドの代理人たちがメディアに迫った――スパーロックにインタビューをしたり映画の話題を伝えたりしたら、そうとうな金額の広告収入を失うことになるぞと
(中略)
アメリカ以上に、日本は文化的に企業の支配に従順だ。そして日本のメディアは特に広告主に対して従属的だ。

本当かどうかは無論わかりませんが、まあ本当だろうなと自分は思いました。スパーロックさんは、

本当の力を持った企業は、いろいろなことがニュースにならないようにすることができるのだ。

と語られ、

悲しいことに、日本はアメリカ式ファストフード食が健康的な伝統的食習慣を最も激しく破壊した国の一つなのだ。

ともおっしゃっています。

映画も本もおもしろかったですが、単なる食の安全話ではなく、「食の安全が蔑ろにされている現状のカラクリ」を総合的に解説してくれているような感じがして、とても勉強になりました。

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