ルポです。
一年間派遣社員として工場で働いていた筆者による現場の生々しい報告談。
筆者はビデオカメラでも当時の記録を取っておられ、それがドキュメンタリー映画として世に出され、一時期有名だったみたいですね。
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自分もよくわからない感じで生きてるタイプですので、ああこれは他人事じゃないなと、心がひんやりしてきました。
筆者は当時借金があったそうで、その返済と「実家を出たい」との思いから、寮付きの派遣社員の口に応募したそうです。
そういうの見ると「派遣社員もなるべくしてなった」みたいに思いそうですけど、このとき筆者はまだ22〜23くらいですからね。いや、そんなもんでしょって思います。
「実家を出たい」というのはとても共感しますね。
居心地はいいけど、この先に未来がないっていうのが直感的にわかるというか、まあ実家暮らしでもなんとかなるだろうけど、そういう未来を自分で選びたくはないというか…。
結局、「ワケあり」な人達が集まるワケありな感じの職場で一年過ごされたようですが、この岩淵さんって頭いいなって思いました。
想像を絶する単調作業を前に、こういうことが言える人は頭いい人だと個人的には思います。
地獄だ。足も腰も痛くなってくるが、それ以上に「俺じゃなくてもできるじゃん」という虚しさが、仕事へのテンションをグイグイ下げる。あーつまんねえ。この重く辛い「惰性」に耐えうるには、強靭な精神力を持つか、そもそも精神性なんざ捨て肉体だけの反復ロボットになるか、そのどちらかしかないように思う。中途半端に自意識を残していては、絶対にこの作業を続けていられない。
自分も昔工場で働いたことありますけど、似たような経験をした覚えがあります。
「君は工場とかに向いてない」って言われたこともあります。
いろいろ考えちゃう人は、単調すぎる工場作業で鬱っぽくなることもあるらしいですよ。
実際岩淵さんは職場ではエースだったそうです。
本当にこんな単調作業の工場でしか働けない人だったら、こんな文章は書けないよなぁ…という箇所がいくつもありました。
個性的すぎる工場のオッサン達ともそれなりの積極性で交流していたようですし、こんな人でもこういう経験をすることがありえるのか、という驚きが印象に残ってます。
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自分はまだまだ恵まれてるなと思いました。
まあ、自分も今底辺生活してますけど、まだまだ下はあるなと。
そして最近こういうの見ると「自分の親がこういう状況にならずに、自分を育ててくれた」ってことにじんわり来るものがあります。
それにしても岩淵さんのお話にはちょくちょく「友達」が出てきたように思います。
同じ底辺でも友達が多いタイプと少ないタイプでまた雰囲気が変わる気がします。
なんだかんだで岩淵さんは手を借りれる相手が多いのかなーという印象でしたが、どうなんでしょうね?
同じ状況に置かれても、自分だったら岩淵さんほど臨機応変にはやっていけないかもなとも思いました。話し相手がいるってだけでもだいぶ救われますしね。
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