NCの日記

孤立気味に生きてきたおっさんの日記です

『あやつられた龍馬』

幕末維新の出来事の研究書?といった印象を受けました。

タイトルには龍馬とありますが、どっちかというとフリーメーソンやそのメンバーだったのでは?とされるグラバーについての記述が多かった印象で、タイトルや表紙から受ける印象ほど龍馬についての話は出てきませんでした。

……という内容からも分かる通り、陰謀論方向の話ですね。坂本龍馬は幕末を昇龍のごとく駆け抜けた志士というよりは、当時の日本で暗躍していた英国の手先として動いていた一人のエージェントだったという方向のお話です。

当時の武家社会の常識やしきたり、幕末という世の中の状況から考えて、龍馬本人や周囲の行動には不可解な点が多いということが述べられていました。


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龍馬は英国のエージェントだった!?なんて書くといかにもな陰謀論ですが、まあ自分はそっち系の話にそこまでアレルギーがないので普通におもしろく読めましたw まあ一つの説としてありなんじゃないでしょうか。

一応本書中で述べられていた「不可解な点」をご紹介しておくと、たとえば龍馬の脱藩ですが、当時の脱藩は重罪であり、本人は元よりその家も処罰対象になるのが常識でありながら、龍馬脱藩に関して坂本家が露骨に処罰された形跡がないということが紹介されています。

著者の主張では、当時、通信技術も移動手段もない社会で、幕末という混乱した社会にあっては情報戦の様相を呈していたとされています。そのため、各藩は密偵、つまりはスパイを多数抱えて使っており、龍馬もまた、最初は土佐藩のスパイとして使われており、江戸への剣術修行も脱藩もすべてはスパイとしての活動の一環だったという主張されてます。

龍馬ファンならご周知の通り、龍馬は下士という下級武士であり、実質のところ農民以上武士未満という何とも半端な立場だったわけです。スパイとして使うならこの点が重要であり、農民よりはカッコがついて、捕まったりしくじったりしたとき、武士ほど大事にならない(容易に尻尾切りできる)という何とも都合のよい身分だった、ということのようです。


他にも、龍馬が出していた多数の手紙がの謎が印象に残っています。当時は紙が貴重品で、それを遠方に届けるのもけっこうな金がかかった世の中。そんな中、脱藩した下級武士であり、本来ならまともな仕事に就けるはずのない龍馬が多数の手紙を湯水のごとく出していると。著者概算ではそれにかかった費用はおおよそ2千万以上とされています。それだけの金をいったいどこから調達していたのか?ということです。

というようなことが書かれています。まあ自分としては、龍馬は何物にもとらわれない自由な志士であって欲しいと思ってしまいますが、偉人の実情を知ると意外とガッカリということもありますからねw この本の中でされている主張が本当だったとしても、それはありえる話だとは思います。

現代では偉人とされる坂本龍馬も、当時の社会にあっては悩み、苦しみ、もがいた一人の日本人でしかなかったのでしょうからね。軽やかに幕末を駆け抜けたように見えて、実際は組織の力に使われていただけという可能性も頷けます。


でも、ただでさえ混乱していた時代の真実なんてそうそうわからないのに、それに陰謀の可能性まで含めたら、真実を知り得る可能性なんてもはや絶望的と言っていいのかもしれません。「その当時にあったこと」を知るというのは、並大抵のことではないというのを感じました。