NCの日記

孤立気味に生きてきたおっさんの日記です

『できることを少しずつ』

精神科医、香山リカさんのエッセイのような感じでしょうか。
現代社会のアレコレや心を病んでいる方達への所感がつづられている一冊です。


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なんかやる気が落ちているのでこういうのを読んでみましたw
別に意識してるわけでも香山さんのファンというわけでもないつもりなんですが、そういえば以前も精神的にキツイときは香山さんの本を読んできたなと思い出しました。

書かれている内容の方向性としては「そんなにゴリゴリ頑張りすぎなくてもいいんじゃない?」というものが多かった気がします。
こうやって書いちゃうと怠け者の意見っぽく見えちゃうかもしれませんが、頑張りすぎて心身を壊したりしている企業戦士のなれの果てなどをよく見ておられるのだろう著者ならではの意見のようにも思えました。

頑張りすぎてしまう人にとっては、疲れているときのバランスとしてこういうのを読んでみてもいいのではと思ったりします。



あと、精神的に慰められるというだけではなく、新たな発見もありました。

『覚悟のない自己愛人間たち』という項目で、最近の自己愛人間たちの実情というものに触れられています。これ、自分もやっちゃってるかも、なんて思えてなんとも悩ましかったです。


最近の自己愛バリバリの人間というのは、そういうのを前面には押しだしてこないタイプがいるそうなんですね。

にこやかに、柔和そうでいかにも理解がある風を装っていながら、自分がリスクにさらされるのは断固拒否、というタイプ。
本文を引用しますと

「特別な私でいたい」という気持ちはありながら、「でも、痛い目にだけはあいたくない」という思いも強い。だから、精神障害者の作業所建設の住民説明会では笑顔で「わかります、わかります」と言いながらも、採決を取ると圧倒的多数で反対、などというおかしな事態が生じたりするのだ

自分も自己愛が大きい方だと思いますので、身につまされます。



自己愛については、これまで自己PRの権化のようだったアメリカ社会でも反省する意見もある、ということが紹介されていました。
原題はちょっとわかりませんが、翻訳版は『自己愛過剰社会』という本があるそうです。
香山さんの文章を信じる限りは「当のアメリカの中で「自分のことばかり考えるのはやめよう」という変化が起きている」とのことです。

肉食を勧めたアメリカで菜食が広がったり、アメリカの後を追いかけている日本からすると皮肉な現状もあったりするようですが、自己愛についても似たような現状があるのかもしれませんね。
一生懸命アメリカの真似をして、慣れない過度な自己PRを勉強していたら、実は本家の方ではそれの弊害が指摘されて反省されていたというのでは笑えません。



おもしろい一冊だったと思います。