著者自身、かつてはスキルアップ系情報発信をする側だったといいます。
そうやって煽られ、スキルアップに熱狂した若者たちは、その後、どういう結末を辿ったのか?ということから始まり、スキルアップが必ずしもいい結果をもたらさない理由が書かれ、最後の処方箋として「スキルアップ」より必要なことが何か、という内容で締めくくられています。
やりたいこと探し、勉強して資格を取って独立、起業、スキルを持つ「強い自分」。
どこかで一度は聞いたようなそういう姿を目指した結果、周囲から煙たがられたりして結局自分のキャリアを壊す結果に終わることも多いのだとか。
「やりたいことがわからない」とキャリアを漂流する人。
スキルアップに熱中するあまり周囲から浮き、会社で孤立する人。
起業したはいいが、結局現在は経営から離れている人。
弁護士や税理士などの強力な資格組ですらも受け皿がなくて失業スレスレ状態。食いっぱぐれ士の中には職業モラルの低下も見られるそうです。
スキルアップを目指すに至ったそもそもの動機である「食いっぱぐれないこと」のためには何が必要なのか?
それを著者は『「脱スキル」の仕事術』と呼んでおられますが、要はごくごく普通のことです。
時間を守る、人に素直に教わる、えらぶって格好つけない、給料はどこから出ているか・お客は誰かを意識する、人を使わず自分が動く、人を批判しないで褒める。
などなど。
全部で28の処方箋が提案されてますが、どれもごくごく普通の、とてもシンプルなものです。
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個人的に、大変興味深い一冊でした。
自分はわりと自己啓発とかビジネス書とか呼んできた口ですが、ネットの意見を見ていると、一部の人達からこの手の「自己啓発」というヤツは非常に毛嫌いされていることを知ったのです。
わりと最近の話です。
個人的にはなじみ深い分野だけに「なぜに???」と気になっていたわけですね。
本書を読んでみて、自己啓発が嫌われる理由、ときに怪しい新興宗教と同じようなニュアンスで語られる理由の一つがわかって、個人的にスッキリしましたw
内容もまあまあ納得いきましたしね。
ネットソースで言うと、アンチ自己啓発意見として、こういうものを見つけました。
自己啓発にハマる人間は、笑えるぐらい搾取しやすい
本書内には、これと類似した記述が見られます。
ただ、ビジネス書の著者は、何らかの目的があって本を書いているということは、意識しておいたほうがいいだろう。その目的の一つは、自分の経営する会社や商売を間接的に宣伝することかもしれない。実際、「ファンビジネス」で食べているビジネス書著者は結構いる。情報商材や手帳を売ったり、セミナーに来てもらったり、有料メルマガを購読してもらったりすれば、かなりの儲けが期待できる。書籍出版はファン獲得の入り口に過ぎないケースも多い。
「スキルアップ教」にはカリスマ性のある「教祖」がいることも多いですからね。
そういう視点で見てみると、新興宗教と重なる部分が大きいようには見えました。
自己啓発をきな臭いと感じる人達がいるのも道理かもしれません。
ビジネス書については、
つまり、あらゆる本には著者のバイアスがかかっているのだ。それを、別の価値感、別の生き方の人がうっかり真に受けると、痛い目に遭う。
とも述べられています。
――――――
「資格系スクールの講師は、その資格で『食えなかった人間』が流れてくる例も多い」というのもネットか何かで見た意見ですが、これも本書内に類似の記述があります。
そりゃ当然かもしれませんね。だってその資格で十分食えるんなら、わざわざスクールの講師なんかやらない人の方が多いでしょうしね。
その資格で食える可能性がゼロとは言わないけど、少なくともその資格だけではとても食えなかった人に教わった「スキル」がどこまで役に立つか。
何とも皮肉な状況だとは思います。
世の中にはいろんな意見があふれ返ってますが、それらを審議する一つの方法が「その方法をやった人間がどういう人生を歩んでいるのか」を調べることだと思います。
本書内に挙げられているスキルアップ例に「女性起業家」というものもありましたが、一時期流行ったこの人達は現在、事業を畳んでしまったりして、経営から離れている人が多いのだとか。
そして、ブームの牽引役になった有名起業家自身も現在は起業家の看板を下ろしており、起業塾も開店休業中だ、というものがありました。
こういうの見ると、むむむ、と思えてしまいますね…('A`)
故意があったにせよなかったにせよ、一時のブームに乗せられた後でハシゴを外された格好になったとしたら、高い授業料だったと涙を飲むことになるのは「スキルアップに熱狂した人」ということになるんですね。
そういうことになったとき、そのブームを煽った「教祖」が責任を取ってくれるかといえば、そんなことはないと。
結局、困ったときに自分を助けてくれるのは、「今自分の近くにいる人」であり、「○○術!」みたいな曖昧なものではないと。
普段から関係ある人と協力関係を作れるように、普段からきちんとしましょうというのが本書の内容だったように思います。
ヘンに取り越し苦労とかせずに、地道にコツコツ生きるのがなんだかんだで最強の処世術なんですかね?
本書の最終章を読んでいると、結局これに尽きるのか…と拍子抜けしたような気分になりました。
自己啓発が持つ別の側面を知れたのと、当初の疑問を解決できたのとで、読んでよかったです。
図書館になかったけど早く読みたかったので珍しく買って読んだのですが、個人的に当たりでした。
ちなみに、コレに載っていた一冊です。
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