NCの日記

孤立気味に生きてきたおっさんの日記です

『嵐が丘』

嵐が丘 (新潮文庫)
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エミリー・ブロンテ
新潮社
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せっかく読んだのでw

エミリー・ブロンテ著。原題は「WUTHERING HEIGHTS」(ワザリング・ハイツ)。1847年に発表された、エミリーの唯一の作品。嵐が丘を発表した翌年、1848年に亡くなっています。30歳くらいだったようですね。

文庫本のあらすじによれば、「一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説」らしいです。

寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた

――――――

冒頭部分だけ昔読んだことがあり、ストーリーの初めはロックウッドがヒースクリフを訪ねるところから始まります。超絶無愛想な対応をするヒースクリフに対し、人間嫌いなロックウッドは逆に親しみを覚えます。


この天邪鬼なロックウッドの感じ方に、コミュ障を患っている人間としては興味を持ちましたねw


とはいえ、ロックウッドが主人公かと思いきや、ストーリーの9割はロックウッドの屋敷にいる家政婦ネリーの回想話です。この回想により、嵐が丘で起こっていた人間模様が明らかになるというのがこの作品でした。




理由はよくわかりませんが、自分は回想モノが好きなので、これがあったからぐいぐい読んでしまった感がありますね。
嵐が丘』で描かれる大半のことが、物語冒頭シーンではすでに終わったこと(作中時系列では)であるというのが、なんかいいなと感じたのです。

ちなみにロックウッドは作中ほとんど登場しません。「ロックウッドに対してネリーが語っている」という体なので、重要人物ですが、作中での動きらしい動きは冒頭とラストのみです。



で、ただの脇役かと思いきや、ヒースクリフはほぼ主人公だったでござるという感じでw

ただ、誰が主人公とハッキリしない作品でした。ある意味、語り手のネリーが主人公とも言えるかもしれません。まんま「家政婦は見た」でしたw


――――――


キャサリンの結婚に絶望して家を去ったヒースクリフがいかにして富豪になって戻って来たのか、その辺知りたかったなーと思いました。

自分は逆転モノも大好物なので、ゼロから富豪に駆け上がる過程を一応理屈つけてほしかったなーと思うのですが、「誰も知らないけどなんか富豪になって帰って来たよアイツ」的なまとめられ方をしていて「うーん」でしたねw
別にdisじゃないんですけど。


なんかこういうところが女性的な感覚なのかなと感じました。
男が書くと、無理やりでもご都合主義でも、「嵐が丘を飛び出して、戻ってくるまでのヒースクリフ」みたいなアナザーストーリーを作っちゃいそうな気がするんですが、なんかその気配を特に感じませんでした。

気になるぞ、ヒースクリフ!!!www




読んでみて、ネリーの回想という形で次第に嵐が丘で起きた出来事が明らかになるというのはおもしろかったです

回想モノは一通り事件が起きて、それが終わった後の結末が冒頭で示されているわけですから、回想で語られている作中時間からいかに現在の状況に至ったのか、という経緯が徐々にわかっていく感覚が「ページをめくる手が止まらねぇ感じ」ですw


ただこれ、恋愛小説なの? 現代ホラーじゃなくて?みたいなのはよく思いましたw

普通にこれストーk(ry



ヒースクリフは本当に最初から最後まで陰険な印象しかなかったです。

ただ、これが150年前に書かれたものと言われたら、なんかすごい。
共感できない部分ももちろんあるけど、人間の感情面の動向については100年経っても変わらないというヤツでしょうか。100年前の人とでも人間関係の悩みとかについては、今でも共感できる面が大きいかもなと思います。

回想モノで見せるという手法も、あの当時からあったんだなぁという気もします。「150年前の世界」が急にリアリティを持って感じられます。


あの当時に生きていた人達も、今の人達と内面はあまり変わらないんでしょうね。


――――――


さて、このエントリを書くにあたり、先程アマゾンのレビューをちらりと見たら、自分が読んだこの版、どうやら「訳がひどい」とわりと悪評も見られましたwww

これはもう翻訳物の宿命で、エミリー・ブロンテが直に書いた『嵐が丘』を知りたいなら、ニュアンス面までくみ取れるレベルで英語を勉強する以外に手はないんですよな。


名訳と言われる版はたいていありますが、古すぎる翻訳本って自分は好きじゃありません。

日本語が不自然過ぎて読めたもんじゃないと感じるからです。
文章の運びから単語のチョイスまで、すべてが古く、違和感を拭いきれないのです。単純に読みづらいと感じるのです。

翻訳本には賞味期限があるという言葉には納得します。




が、若干気になったので機会があればまた別の『嵐が丘』を読んでみてもいいかなとは思いますね。ヒースクリフの印象がガラリと変わったらどうしようw

そういえば映画もあるみたいです。


嵐が丘 [DVD] FRT-007
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さすが名作。

100年以上も読まれ続け、翻訳されて外国にも届けられ、映画にまでなれば、エミリー・ブロンテも浮かばれるでしょうね。

そう考えたら、100年以上前の人が書いた物語を(翻訳とは言え)読めたのはなんかロマンがあるなぁと思ってしまいます。当時、作者はどういう気持ちでこれを書いていたんでしょうか。